ですが病院勤務3年で、私は挫折しました。ある患者さんとの別れがきっかけでした。
名前はYさん。股関節の骨折で入院されていた担当患者さんです。退院後も旦那さんに付き添われて、外来リハビリ通院されていた70代の明るいおばあちゃんです。
真面目で、いつも笑顔で一生懸命リハビリに取り組まれていて、最初は杖がないと歩けない状態でしたが、徐々に杖が無くても歩ける距離が増えつつありました。
そんなYさんがある日から、外来リハビリに来なくなりました。
理由を聞くと、自宅で転倒して足を骨折したと・・・
私は、「また回復して歩き回れるだろう」そう思っていました。
今から思うと、私は「リハビリ」を舐めていたのです。次から次へと患者さんを治療していく中で、患者さんとしっかり向き合わず、治療が流れ作業になっていました。
少し年数も重ね、驕りもあったのだろうと思います。そこから持病の影響もあり一向に状態は良くならず、寝たきりの日が続いていました。
そんな中、Yさんの体調が急変します。「誤嚥性肺炎」でした。
そこから一気に容態は悪化し、呼吸器が入り、1ヶ月程で全身が固まり、息をするのがやっとという状態になっていました。
私は、何もできなかった自分の無力さと罪悪感で胸が引き裂ける思いでした。
そして最期の日、リハビリで部屋を訪れると、寝たきりで呼吸器に繋がれたYさんがいました。ベッドサイドでのリハビリを終えると、面会に来ていた旦那さんが、うつむきながらポツリと「今までありがとう・・」と言ってくれました。
その時初めて患者さんの前で泣きました。悔しさと情けなさで涙が止まらなかったことは今でも忘れません。
その晩、Yさんは亡くなりました。あまりにも無力で、何も出来なかった自分へ旦那さんがかけてくれた「ありがとう」の言葉の価値は何事にも代えられません。
最愛の人があと何回呼吸ができるか、後どれくらい一緒にいられるか、そんな中で自分へかけてくれたこの言葉が、今の自分に生き続けています。