私には、一生忘れられない患者様がおります。開業して2年目の時期、お付き合いがあるケアマネージャーさんからのご紹介でその患者様に訪問マッサージさせていただく事になりました。
私が治療家人生に邁進するきっかけとなる患者様でした。
訪問マッサージはとてもすばらしい業務ですが、介護保険の「要介護」のレベルに該当するADLの低下が保険適用となる目安ですので、施術を行ってもめきめきと回復する患者様ばかりではありません。
人生の最後の期間にお手伝いするお仕事となります。一度寝たきりになってしまうと、仕事に復帰する事はおろか、誰かの厚い介護がないと生活もままなりません。そうなる前に、何か手立ては無いのか?と私は長年自問自答してきました。
まずは奥様にだけ施術させていただいていたのですが、すぐにそのご主人様にも施術させていただく事になりました。現役のころは社長さんをされていたからか、まるで私を部下のように接してくださり、時折お食事にお招きくださるほどにご親切に接していただきました。
ありがたいことに、「なんで招待してくれないんだ」と私の結婚式、披露宴にまでご出席いただきました。お祝いの品物までいただき、まさか患者様からそこまで、言葉で言い表せないほどのご厚意にあずかる事が人生においてあるとは思っておりませんでした。
しかし、よい時期は長く続きませんでした。その患者様は心不全と脊柱管狭窄症がじょじょに進んでしまい、ベッドに横になる時間が増えるとともに腰痛も悪化してしまいました。
その時の、私の持っている知識、技術の全てを用いて治療させていただいたのですが、患者様の腰痛が緩和する事なく心不全が悪化し、入院し、そのまま亡くなられました。言い訳してはならないと思います。まるでお役に立つことができませんでした。
悔しくて、あの日以来、もうあんな思いをしたくないと治療の勉強に打ち込んできました。